ハナボウズ

ハナボウズの山ログ

Science JA ↓ 89 episodes

​群馬県中之条町、標高1000mの山の中ハーブや宿根草を育てる「ハナボウズ」の園主(中島)が、日々の農作業の合間に、山の音と言葉を記録しています。ステレオ録音で、山の中にある畑の環境ごと、カエルの声、鳥の声、風の向き、遠くのチェーンソー音、この山に生きているものたちの気配を伝えたい。いつか誰かがこれを聞くとき、その朝の空気が伝わったら面白いなと思っています。ハナボウズ圃場コード:たびたび登場する、畑の定義です。​K = 湿地・開放農地・森林が接するエッジ環境​A = アトリエ(現在の作業場の隣)​G = ゴリラ形の岩がある枝もの畑(Aから100mくらい)​M = 開拓時に水鉄砲がぶら下がっていた畑、標高1030m・北向きの...

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Author

ハナボウズ

Category

Science

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Oct 15, 2026

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Episodes

山桜の下に作物が植わっている 15.04.2026

四月の曇り空の下、中島はハウスでアルケミラとアストランティアに水をやりながら、今年と昨年の植物の伸びの逆転に気づく。Kの露地畑では山桜が二分咲き、その後ろにはスタックしたままのWA100。 春の景色と積み残した仕事が、静かに並んでいる。 そして今朝、録りためた山ログをまっさAIに読み込ませたら、思いのほかいい返答が返ってきた。その対話の一部を下に貼り付ける。 気分スコア2。疲れた日も、ログは続く。 【以下、私...

マキタの充電式チェーンソー 14.04.2026

チェーンソーのボタンを押す朝がある。エンジン式のような儀式は要らない。ただ音が立ち上がり、気持ちが少しだけ前へ動く。 今回のログは、G圃場でのディアボロ(フィソカルパス)の剪定作業。昨年の丸坊主から、今年は切り株状に整える。先輩の言葉が手に宿っている。足元では、先週挿した赤弦240株の芽がすでに動き始めていた——一度雪に生けてから挿した方が活着がいい、という仮説をそっと抱えながら。 昨日はPTA総会。中之条...

山の残雪は馬の形に見える 13.04.2026

Kの石のベンチに腰を下ろす。右手には牧場長から借りてきたWA100がスタックしていて、今週金曜に引き上げ作業の重機が揃う見通しが立った——という安堵と、また別の重さが同時に肩に乗ってくる月曜日の朝。 昨日はホンダさんからいただいたアカツルをG(ゴリラの岩の畑)に全部挿し終えた。3年後以降に冬季作物として回収できれば、という話。今日は露地のセダム防除を開始して、ヒメヒマワリとヘレニウム(リトルヘンリー)の移植...

石のベンチ 12.04.2026

晴れた朝、K畑のハウス東側、石のベンチに腰を下ろした中島の視界の右手には、牧場から借りた小松のWA100が、ぬかるみに沈んだまま動かずにいる。一昨日の雨の中で起きたそのスタックは、まだ解決されていない。見るたびに、少し重たいものが胸に落ちてくる。 ただ、怪我はなかった。ヤマギワさんも、中島も、無事だった。その事実をひとつの着地点として、中島は今日の畑へと向かう。 昨日は、そのホイールローダーを横目に見なが...

ホイールローダーが畑でスタックしたよ 10.04.2026

午後、雨が戻ってきた。 牧場から借りたホイールローダー コマツのWA100、何トンあるんだろう、でかい機械だ——で堆肥を畑に入れるところまでは、うまくいっていた。バケットで直接圃場に突っ込んで、量は落とせた。問題はその帰り道だった。水場と畑と水源が作る三角形の中で展開しようとしたとき、ホイールローダーが畑の道でスタックした。 気分スコアは「1」。テンションは、なぜか高い。 トラブルに見舞われると人間はそわそわ...

やる気の出し方 10.04.2026

朝は雨だった。だから今日はゆっくりできると思っていた。ところが空はそんな段取りを無視して、急に晴れ始めた。中島は慌てて畑へ向かい、ハウスを開け、アルケミラへ水をやった。最悪を避けるために、とにかく体を動かす。それだけのことだったが、動いているうちに不思議と気分が上向いてくるのがわかった。 やる気というのは、待っていれば湧いてくるものではないのかもしれない。昨日のK圃場での掘り上げ作業で残った筋肉痛が...

ステレオ録音にしてみた 09.04.2026

四月九日の朝、霜柱が残っていた。夜が晴れれば地は冷える。春はまだ、仕事の途中だ。 前日の夕方、アルケミラとセダムへの防除を終えた。アルケミラにはもう花茎が上がってきている。花をかじられる前に手を打つ。段取りは、いつも前日から始まっている。 今日は妻と二人で、試験栽培してきた苗を土の中から掘り起こす日。ヒオウギ、バプテシア、アガスターシェ。調子がよかったものを選んで、次につなぐ。午後はG圃場で挿し木の...

透明マント 08.04.2026

四月の風は冷たく、ダウンベストをパーカーの下に重ねて畑へ向かう。アストランティアに水をやり、枯れ草を刈り払い、体を動かすうちに気分が2から3へ上がっていく。農作業には、薬より早く効くものがある。 Kのハウスに入るたびに、気づけば草を1本抜いている。特に決めたわけじゃない。ただ来るたびに1本。いつの間にかそれが習慣になっていて、いつの間にかハウスは綺麗になっていた。意志よりも、動線の方が人を動かす。 水場...

町内会に参加してきた 06.04.2026

土日、畑に行けなかった。でもそれには理由がある。 ナマス地区の町内会に出席していた。昨年度の会計報告、今年度の草刈り計画、そして飲み会。今年は町営住宅の班長も引き受けることになったので、先人たちに話を聞く絶好の機会でもあった。「地域の人に敵だと思われないためにも、顔を出すのは大事」——農家としてだけじゃなく、住民としての中島の話。 そこで見た光景が、ちょっと頭に残っている。女性たちがお茶を配っていた。...

決断 04.04.2026

四月の曇り空の下、アルケミラのハウスを開け、わずかに換気の戸を開ける。晴れ間が差し込んで苗が蒸し焼きになることを防ぐための、ほんの小さな隙間だ。昨日は病気疑いのセダムを廃棄し、路地から掘り上げた健康な株をハウスへと補充した。その作業のなかで中島が気づいたのは、妻の掘り上げの腕前だった。手際よく苗を引き抜いていく姿に、「掘り師」という呼び名が自然と生まれた。 今日は畑を休む。娘がバレエ教室に通い始め...

チェーンソーの音 03.04.2026

春の朝、Kのセダムハウスに入る。ハウス内の温度計は17度を指している。セダムにとってちょうどいい空気だ。気分は低い。それでも手は動く。 昨日はおぎはら植物園へ行った。棚の前を歩いていると、フラワーファーム沓掛の沓掛さんと研修生の清水さんがいた。同じように苗を物色している。真剣な目をした人たちがほかにもたくさんいた。ガーデニング好きも、農家も、みんな同じ棚の前に立っていた。おぎはら植物園は、草花に関わる...

雨の中の設計図 01.04.2026

雨が屋根を叩いていた。それでも中島は録音を止めなかった。 Yのハウスで冠水をして、ホースを点検して、除草剤を撒いた。チューブがあと3Mだけ足りない。土壌診断の結果はまだ来ない。何もかもが「もう少し待て」と言っている。 ずっと頭の中で宙ぶらりんだったYハウスの使い方が、今日ようやく声になった。4分割、防草シートマルチ、なるべく立ち寄らない設計。落ち込んだ日に誰とも顔を合わせずに済む畑というのも、ひとつの農...

仮説をほどく地衣類 31.03.2026

雨の朝、図書館で借りてきた苔図鑑をめくっていたら、ウメノキゴケという名前が目に入った。SOxに敏感で、空気汚染の指標になる地衣類だという。ところがこの農地の周りには、それがべったりついた木が何本もある。以前から温めていた「SOx→カルシウム不足→カタツムリ減少→鳥が減る→山の畑はカルシウムを入れているのでカタツムリの楽園」という仮説が、一ページでほどけた。 でも考えてみれば農業でも同じことは起きている。あの...

露地の作業始めました 30.03.2026

今日から露地作業を本格的に始めると決めた。G畑のサンゴミズキを掘り上げてK畑の端へ移す。ディアボロの草払い・剪定・機械入れ。土が湿っているから今日のところはセダムの草取りに充てる。段取りを頭の中で組み立てながら、A作業場を出て軽トラを走らせた。 戸高君の畑の横を通りかかると、彼がもう作業をしていた。ヤッホー、と声をかけて通り過ぎる。それだけのことだが、不思議とエンジンがかかる。やる気のない朝でも、同じ...

作業場の模様替えをした 28.03.2026

四年か五年、そのままにしておいた机があった。部屋の真ん中に島のように浮かんで、花を置く場所はどこにもなかった。それに気づいていながら、ずっとそのままにしていた。今日、中島は机を壁に寄せた。たったそれだけのことで、作業場が広くなった。 夕暮れ前の見回りで、イノシシの痕跡。マウンテンミントの畝が掘り起こされていた。獣の論理は単純で、腹が減れば掘る。そこに何年かけて植えたかは関係ない。 昨日は花の部会の総...

酸性雨という言葉どこ行ったの 27.03.2026

昨晩、AIと話していて気づいたことがある。「酸性雨」という言葉を、最近まったく聞かなくなっていた。 調べてみると、雨そのものが問題ではなくなったのではなく、問題の形が変わっていた。NOxやSOxといった大気汚染物質が、霧となって山の中腹に漂い、そこに住むカタツムリの殻の形成を妨げている。殻のないカタツムリを食べる小鳥たちは、卵に必要なカルシウムを摂れなくなる。酸性雨は「雨」ではなく「霧」として、静かに生態...

雨の畑、生き残りの話 26.03.2026

雨の朝、中島は畑へ出た。娘が胃腸炎で、体調が心配だったが、それでも長靴を履いた。 路地のセダムが、親指ほどの芽を出していた。冬を越えたというより、冬をやり過ごした、という顔をしていた。株間の整理を続けている。2条の千鳥植えを、1条へ。隣の株とぶつかり、真ん中が蒸れる——その問題を、少しずつ解いていく。33メートルの畝に100株。防草シートで左右を挟んで、セダムだけがぎゅうぎゅうと列をなす畑を、まだ頭の中で育...

名前も知らない人の家に花が飾られた 25.03.2026

【灌水音のBGM大きめ】 アルケミラの灌水音を背景に、ハコベを引き抜きながら考えていた。花は必需品ではない。それでも、群馬フラワーパークで花瓶を買いに戻ってきた若い夫婦のことが頭を離れない。名前も知らない。ただ、その日以来あの家に花が飾られるようになった。花を売ることは、花のある暮らしをゼロから一に変えることかもしれない。 古物商の許可が下りた。山の蔓や倒木も、誰かのディスプレイの骨格になれる。畑の隣...

花坊主のいたずら 23.03.2026

卒園式の朝、人前に立つという行為が、いつも思いがけない重さをともなう。拍手の中で子どもたちを見送り、声が震えたことを恥じながら帰り道につく。イベントの前夜に憂鬱が訪れること、航空券を取ったはいいが飛行機を前に沈んでいたあの学生時代のことを、今日もふと思い出した。 しかし、言葉にしてみると不思議と落ち着いてくる。気分1が、話しながら2になり、いたずらを思いついたところで3まで戻っていた。誰かに届けるため...

山に残る民話 22.03.2026

作業場に、見覚えのないインパクトドライバーが置いてあった。ピンと来た。5年前にこの土地を引き合わせてくれた、山本茂さんのやつだ。落とし物を届けに行ったら、思いがけず長話になった。 茂さんが言うには、この六合地区には民話がたくさん残っているが、書籍にはなっていない。手書きのコピーがあるだけだ、と。その紙束をもらって帰ってきた。声で読み上げて、文字に起こして、返す。そんな小さなプロジェクトが、今日の午後...

場所に名前をつける 21.03.2026

新しく手に入ったハウスに名前をつけるという、小さいが決して軽くない行為について、中島はしばらく悩んだ。K はかぶる。では何か。山の上にあった庭園。山の上。Y。——決まった、と声に出したとき、それはただの記号ではなく、土地とのはじめての約束になっていた。 畑に名前をつけるのは、地図を読むためではない。ゴリラに見える岩、ぶら下がっていた水鉄砲、そして今度は山の上の庭園。名前はいつも、その場所で起きた何かの残...

100坪のビニールハウス 20.03.2026

春の陽気が作業着の判断を迷わせる日、ひとつの抽選会が静かに畑の地図を塗り替えた。応募者はひとりだった。つまり、迷いも競争もなく、ただ土地が向こうからやってきた。100坪のハウスが増える。アストランティア、アルケミラ、アスチルベを植え込む計画が頭のなかで芽吹きはじめ、乾ききった床土を想像するだけで胸が弾む。しかしその弾みに影が差すように、やるべきことの重さもどかりと心に落ちてきた。ワクワクと憂鬱は同じ...

カモミールは二日酔いに良いらしい 19.03.2026

二日酔いの朝、私は畑へ向かった。体は重く、気分は1か2。昨夜は深酒とAIで遊びすぎた。 しかし、その深夜の実験は思わぬ扉を開いていた。ソローの『ウォールデン』をAIに食わせたら、ソローが応答してきた。「2ドルで売れる豆を育て、それに費やした時間と労力を計算した」——あの一節の響き。私は2026年の山の中で花を育てている者として問いを投げ、同じ問いが返ってきた。商品作物として花を育てるとき、花本来の意味は失われる...

周りが見えていない 18.03.2026

神社の駐車場で、自分の車が周りと比べてひどく汚れていることに気づいた。結婚式の日に、石を返しに行った帰り道の話だ。 日常の中で、自分のものがどれだけ「見えなくなっているか」に気づくのは、いつも他者の目線を借りた時だ。毎日乗っている車は、毎日見ているからこそ汚れが目に入らない。神社という非日常の場に持ち込んで初めて、足回りに積もったエンカルの白さが見えた。 作業を終えてタンクに水が溜まったころ、脚立と...

いつか行こうと思うとなかなかいけないもんだ 16.03.2026

午前中の灌水を終え、アルケミラの畝で草を抜きながら、昨日と明日のことを考えていた。昨日は婚活会の挨拶に立った。用意してきた言葉は緊張の中でほとんど抜け落ち、残ったのはひとつの文だけだった——山の環境で育った花を切り取って、都会に送っている、と。それで十分だったかもしれない。会は盛り上がり、自分が何かをする必要はなかった。 明日は日光へ行く。結婚式のとき神社から授かった石を、ずっと返しに行けずにいた。...

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