ハナボウズ

ハナボウズの山ログ

Science JA ↓ 69 episodes

​群馬県中之条町、標高1000mの山の中ハーブや宿根草を育てる「ハナボウズ」の園主(中島)が、日々の農作業の合間に、山の音と言葉を記録しています。ステレオ録音で、山の中にある畑の環境ごと、カエルの声、鳥の声、風の向き、遠くのチェーンソー音、この山に生きているものたちの気配を伝えたい。いつか誰かがこれを聞くとき、その朝の空気が伝わったら面白いなと思っています。ハナボウズ圃場コード:たびたび登場する、畑の定義です。​K = 湿地・開放農地・森林が接するエッジ環境​A = アトリエ(現在の作業場の隣)​G = ゴリラ形の岩がある枝もの畑(Aから100mくらい)​M = 開拓時に水鉄砲がぶら下がっていた畑、標高1030m・北向きの...

Author

ハナボウズ

Category

Science

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Jul 8, 2026

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Episodes

手がまわらない 08.07.2026

中島は、標高1030mの北向きの畑、Mへ足を運んだ。今年Yのビニールハウスが増えたぶん、Mまで手が回らなくなっていた。草はすでに手に負えない高さまで伸びている。 暑さが増してきたこの日、目当てはモナルダの収穫だった。妻は作業場でセダムの調整に当たり、中島はひと息つきながらこの記録を録っている。 Mではこれまで、モナルダとフィリペンジュラ、それにクガイソウが採算の取れる品目だった。しかしクガイソウには昨年から...

ラブパレード 01.07.2026

七月に入り、鳥の声が心なしか減った気がする畑で、中島は今年の花たちと向き合っている。アストランティアは去年の管理不足で株が弱り、マウンテンミントも植え替えの影響で先行き不安。それでも背伸びせず、来年への立て直しに舵を切った。 アキレア「ラブパレード」は、今はなきカラクの里のオーナーだった方から譲り受けた苗が始まり。名前がしっくりこず色名で出していた時期もあったが、中卸さんの一言で名前が戻ってきた——...

生産効率とハイドパーク 29.06.2026

曇りから雨へ移る午後、中島は出荷前の調整作業を終え、軽トラの荷台に腰をかけながら今日を振り返る。育てて2年目のエリンジウムは枝ぶりこそ良いが、荷造りと送料を考えると単価だけでは仕事にならない――そんな現実と、ドライフラワー向けという新しい売り先への気づき。 先週は安カ川ファームの博さんに車を出してもらい、青木村のフラワーファーム沓掛さんを再訪。重油栽培から季節の草花へ移行した十棟のハウスと、自ら世界観...

ほぼ環境音、セダム切り忘れた 24.06.2026

花を切り忘れたことに気づいた中島が、軽トラに積み込み中作業を記録した一本。発話は短く、その代わりに約28分間、里山の生物音が豊かに記録された。 時間帯: 13:39〜の昼下がりにもかかわらず鳥のさえずりが活発 → 6月の繁殖期ピーク季節遷移: 春の鳥(ウグイス、カッコウ類)と夏の虫(ニイニイゼミ)の共存が特徴的 → まさに「晩春から夏への移行期」生息環境の推定: ウグイス + ホトトギス + オオヨシキリ + アマガエル + ウシガ...

こいつにスパゲティを食わしてやりたい 23.06.2026

ほぼウグイスの鳴き声とハサミのパチパチ音、たまに園主の声が入る回。六月二十三日、K圃場。アルケミラの株分け作業中、古い根を残すと苗が浮いて欠株するという仮説。曇りで風が少し肌寒い一日、妻と話したジョジョ五部のあのシーンの出典探し、産地見学会に向けた自己紹介の練習、桔梗の発芽率は七割くらいだった。給油(車に)とビール(園主に)を買って帰る一日。

たぶん鵺 18.06.2026

深夜23時43分、六合地区。深酒の夜、中島は住宅の周囲を徘徊していた。南の空では雷が光り、星は霞に隠れている。針葉樹の闇の中から、一定の間隔で「ピー、ピー」と鳴く声が届く。その正体を確かめようと、マイクを手に外へ出た。 夜鷹か、鵺か。鳴き声は判然としないまま、記憶は数年前の蒸し暑い夜へと遡る。この山に移住してから出会ったという、妖怪か神か分からぬものの話——酔いの中で、その輪郭をたどる。スマホのライトを...

遊びで続けていきたい 16.06.2026

六月の午後、中島はAフィールド周辺の草刈りの合間に録音を始めた。七月になれば蜂が巣を守り始める——就農前に師匠から聞いたその話を、眉唾だと思いながらも肌感覚で信じている。藪を放置すれば、ある日突然、蜂が飛び出してくる。だから今のうちに刈っておく。 日曜日に出品した中之条花マルシェは、客層がよかった。入園料を払って植物園に来る人たちだ。一本百円の売り台に自分で花を拾って束ねていった客のひとりが、上手に組...

中之条花マルシェの準備 13.06.2026

中之条花マルシェの前日、作業場で明日販売予定の生花選別作業を録音してみました。 独り言、鋏で花を切る音、ハチの乱入、足音 2026年6月13日土曜日14:36〜

圃場Kの環境音2026年6月13日 13.06.2026

六月十三日、土曜日。K圃場で、中島はひとり花を切っていた。翌十四日の中之条花マルシェに向けた準備作業だった。マイクは軽トラの荷台の上に置かれ、その日の音を拾っていた。風の気配、鳥やセミの声、そして時折やってくる来客の声。録音はやがて、スマートフォンの発熱によって静かに途切れた。機械が音を上げたその瞬間まで、中島は花を切り続けていた。  マルシェの前日というのは、静かな緊張感がある。売り物になる一本を...

自己紹介より先に鳥の声 12.06.2026

市場と中卸の担当者が圃場を訪れた。車を降りた中卸の方が、自己紹介より先に言った言葉が「うわ、鳥の声がすごい!」。そこから中島のAI鳥図鑑トークが炸裂。ウグイス、ガビチョウ、晴れると突然鳴き始めるハルゼミ……圃場の四方を林に囲まれたエッジ環境が生み出す音響環境を、来客とともに楽しんだ。 午後はアルケミラの掘り上げ作業へ。「もっと作ってほしい」と言われたばかりの花を、鋤で掘り起こし300株以上をコンテナへ。Y...

サワガニつかまえた 09.06.2026

六月の山は、汗と乾きの季節に入った。中島はKフィールドで防除と草刈りをこなした。思ったほど進まなかったが、ある程度は終えた。水筒一リットルでは午後の管理作業が持たず、妻が置いていった分まで飲み干した。喉がひりつく。地面は濡れているのに、自分は乾いていた。 雨上がりの翌日、山道にサワガニが出る。それを知っていた中島は、軽トラ移動中にオス一匹、メス一匹を捕まえた。娘に頼まれていたのを思い出して。バケツに...

自己洗農 08.06.2026

六月八日の朝、中島は雨の降り始めたK圃場の石のベンチに腰を下ろしながら山ログを録った。昨日は落ち込んで早めに切り上げ、娘の寝かしつけごっこに付き合ううちに眠ってしまった。目が覚めると体の上にビーチボールとトランシーバーと折りたたまれた布団が積まれていた。その無言の置き土産が効いて、気分は三まで戻っていた。 丁字草を切りながら、中島は農業を「仕事」と捉えることの重さを考え直した。ベランダ園芸の延長でい...

なんで農家やってんのかな 06.06.2026

暮坂峠の作業場、梅雨の端に位置する六月の午後、中島は軽トラの荷台に腰かけ、風に吹かれながらマイクに向かっていた。晴れてはいるが冷たい空気が肌を刺し、パーカー一枚では少し寒い。収穫はいつもより少なく、注文分と市場分を調整し、バケツを洗い、伝票を書き終えてようやく一息ついた午後四時——その静けさの中で、ずっと昨夜から胸の奥でくすぶっていた問いが浮かんできた。「なんで農家やってんのか」。 都内のベランダで...

妻のタンブラーとカフェインの午後 03.06.2026

水曜の午後四時半、台風が上陸した日。午前の大雨が嘘のように晴れた空の下、中島は切り日の休憩を軽トラの荷台で過ごしている。気分は二。やるべきことを数えると気が滅入るので、かわりに今日あってよかったことを思い返す。昼に家へ戻り、食器棚に眠っていた妻のタンブラーへあたたかいコーヒーを注いで持ってきた。アトリエの山の中、それを飲みながら岡恒の赤白の鋏で出荷前の調整をする。カフェインのおかげで、もう少し頑張...

花火と古傷と生物音響学 01.06.2026

石のベンチに腰を下ろす。晴れた空の下、ハウスの中は蒸し暑く、セダムやジャーマンカモミール、センダイハギ、イガグリスゲを刈り取り、本数の足りない品目を組み合わせて一箱に収める算段を立てる。農の現場では、足し算と引き算が静かに繰り返されている。 土曜日は岩崎さんの農場でバーベキュー。戸高くんと炭火を囲んだが、オーストラリアンキャットルドッグが吠えながら駆け寄るたびに左肩の古傷が疼いた——かつてチャウチャ...

コロコロ変わる方針 26.05.2026

五月二十六日、九時二十四分。空の九割を雲が覆い、雨上がりの温みだけが残る朝。出荷の箱詰めを終えて、切り終えたばかりのアルケミラのハウスへ。乾いた土にかん水をして、石のベンチに腰を下ろす。気分は、五段階のうち三。 露地でいちばん美しいのは、いまはチョウジソウ。球根の花たちが去ったあと、咲き進みの遅い青を拾うように昨日百本を切った。少し遅いかと思いながら、今日それを出荷してみる。寺田さんから譲り受けた...

敵ではないという表明 22.05.2026

雨から曇りへと移ろった暮れ方、橋を渡って花の部会へと向かう。こうした会の前には決まって憂鬱が訪れる。裁判にかけられるわけでも、検察に詰められるわけでもないのに——それでも歩を進めるのは、この部会に身を置くこと自体が、自分は敵ではない、ここにいる、という地域への小さな表明だからだ。 橋の上から屋根が見える。平成末に建てられた自宅と、それより古い昭和築の隣家。錆びはじめた自分のトタンを眺めながら、家の年...

出荷を待つ花たちの前で 19.05.2026

母の日が過ぎた集荷場には、息継ぎのような静けさが流れている。クリスマスローズ、チョウジソウ、アストランティア、アルケミラ……並ぶ箱の名から、誰かの一週間の手の動きが浮かぶ。だがセダムを出している人は、まだいない。同じ場所に同じ季節が来ても、人それぞれに別の時間が流れているのだと、中島は思う。 住宅に戻れば、玄関先に娘の鉢。一年前に「これがいい」と娘が選んだエキナセア「ブルーベリーチーズケーキ」だ。し...

今年も帽子を忘れた 17.05.2026

K圃場の石のベンチに腰を下ろしながら、中島は今年最初の草刈りを終えた余韻の中で録音を始める。例年なら6月を待って刃を入れる斜面が、今年は暖かさに背中を押されて早々と草を伸ばしていた。刈払機(ビーバー)を手に、作物周り・歩道・軽トラ通路をなんとか確保したものの、前掛けを忘れてきた。作業服に積もった草の粉は、準備とはいつも後から気づくものだということを、静かに証明している。 露地ではチョウジソウが咲き、...

防草シートと筋肉痛 14.05.2026

晴れた五月の朝、中島はYハウスの中に立ち、防草シートに水が染みていくのをじっと見ていた。 思いつきから生まれた「防草シートマルチシステム」——シートに穴を開け、灌水チューブごと巻き込み、土を作ったらまた戻す。残渣を捨て、片付け、そして再び始める。この単純な循環が、管理の手間を減らすかもしれない。風で飛ばされないか少し心配だが、まずやってみる。農作業においては、妄想を現実に変えるのは、いつも「やってみよ...

地域清掃の後昼間から酒を飲む 11.05.2026

母の日が終わった。花の値段がガクッと落ちる、その瞬間がある。六合地区は晴れ、風はちょうどよく、中島はK圃場ハウスの灌水をしながら音声を録った。昨日は町営住宅12世帯のうち4軒で道路清掃をした。一輪車、スコップ、竹箒。参加者は少なかったが、生活道路はきれいになった。昼から同期就農者とお酒を飲んだ。繁忙期が終わったから、いいだろうと。 自分で建てたハウス1棟目には歪みがある。だからアルケミラは中心から先に育...

花と風邪と、カエルの声 06.05.2026

五月の石のベンチに座って、千本近い花を前に録音している。アストランティアが一バケツ、アルケミラが四バケツ、セダムを少し。母の日前の最後の収穫が終わった。 今年はハウスを二月十四日から閉め始めた。例年より一ヶ月遅らせた判断は、今年の暖かな春に救われた。無加温のままで、母の日に間に合った。 GW中は、娘からもらった風邪をズビズビしながら、解熱剤を飲んで箱詰め作業を続けていた。妻と娘は昨日、五日ぶりに帰って...

母の日に花を贈ったことはあるか? 02.05.2026

花を育てて五年、初めて「母の日」という祭りに正面から飲み込まれた。 アルケミラとアストランティアとセダムを切り、夜まで箱に詰めながら、中島はふと思う。花が美しいとされているから花農家が成り立つのか、花農家がいるから花が美しくなるのか——答えは出ないまま、伝票を貼り、明朝の便に乗せる。 昨日銀行の金融担当者から電話があり、住宅ローンの審査が落ちた。節税が信用を食う。農家の帳簿はそういう構造をしている。...

澱んだ水槽 28.04.2026

先週行ったJAの支店の水槽が、ずっと引っかかっている。去年はグラミーもエビもいた水槽が、今は藻とシダと黒いプラティ一匹だけ。中島はそこに、地域農協というインフラが静かに変質していくメタファーを見た。ローン申請で訪ねた金融担当者もやつれていた。共同出荷は物流コストを下げてくれるが、価格決定権は渡したまま。自分たちで価値を出せる場所——直売、マルシェ、古物商のBASEショップ——を、もっと面白がりながら続けてい...

散った桜と、個体差の話 26.04.2026

石のベンチは冷たかった。四月末の山は、まだそういう朝を持っている。出荷を終え、ハウスを開け、植えたばかりのラムズイヤーとエキナセアに水を引く。曇天の日の換気は加減が難しい。焼けさせず、しかし蒸らさない程度に。気分スコアは1。娘の鼻詰まりで夜眠れなかった。 けれど前の日の午後、その娘はプチ発表会のステージに立っていた。三歳から中学生まで、みんなが同じ振り付けで踊るのを特等席で見ながら、中島は農業に近い...

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