野村一夫(人文社会学者)
ソシオリウム
人文社会系講義。社会学の復習から社会理論へ。
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Episoder
258民主的理性(20)知の蓄積(認知的人工物) 07.11.2026 27:18
エレーヌ・ランデモア『民主的理性』勁草書房。 『ソシオリウム』第258回は、全20回にわたって読み進めてきたエレーヌ・ランデモア『民主的理性』の最終章(結論)を取り上げます。 法学部・政治学科の専門ゼミ(2単位分)を疑似体験するような本格的なテキスト講読も、いよいよひとつの節目を迎えました。今回は、民主主義の利点を「認識的信頼性」や「集合知」の観点から理論的に擁護する著者の総括を読み解きます。 なぜ多数者...
257民主的理性(19)真理に対するアーレントとロールズの懸念 06.11.2026 17:43
エレーヌ・ランデモア『民主的理性』勁草書房。 「真理」の名の下に反対者を黙らせ、自由な議論を抑圧してしまう危険はないのか――。今回は第8章の締めくくりとなる「反権威主義に基づく異論」を取り上げます。 議論の手がかりとなるのは、ハンナ・アーレントとジョン・ロールズという二大思想家に共通する「真理概念への警戒」です。アーレントは歴史の改竄や事実が単なる「意見」へ矮小化されるリスクを告発する一方、理性の真理...
256民主的理性(18)専門家の予測精度は高くない 04.11.2026 15:54
エレーヌ・ランデモア『民主的理性』勁草書房。 阿部孝太郎「経済・経営における知識のあり方──「専門知」と「集合知」の対比を中心に」『経済社会学会年報』45巻(2023)。 『民主的理性』第8章の読解を進めながら、政治学者フィリップ・テトロックらの予測研究を手がかりに「専門知」の限界と集合知の可能性を掘り下げます。 歴史を振り返れば、大恐慌直前の株価高騰を確信した経済学者や、パソコン・iPhoneの普及を否定したトッ...
255民主的理性(17)政治的認知主義、文化主義と絶対主義 03.11.2026 16:18
エレーヌ・ランデモア『民主的理性』勁草書房。 本回で焦点を当てるのは、「文化主義的見解」と「絶対主義的見解」という二つの対立軸です。歴史や共同体の文脈によって正しさが決定されるとする立場(ローティや後期ロールズ)と、人権や理想的発話状況のように普遍的なメタ基準を措定する立場(ハーバーマスや初期ロールズ)の双方を対比し、それぞれの理論的射程を検証します。 そのうえで、この対立を乗り越える「ハイブリッド...
254民主的理性(16)政治的認知主義と事実・価値の位相 02.11.2026 24:41
エレーヌ・ランデモア『民主的理性』勁草書房。 ハンナ・アーレント『過去と未来の間』みすず書房。 (16)政治的認知主義と事実・価値の位相 エレーヌ・ランデモア『民主的理性』第8章「政治的認知主義」から、手続きから独立した「判断の正しさの基準」をめぐる論点を掘り下げます。 歴史上繰り返されてきた軍事的敗北や飢饉、あるいは急進的な経済政策がもたらした破壊を振り返りつつ、まずは「危害を避ける」という最低限の基...
253民主的理性(15)不完全な手続的正義 01.11.2026 16:41
エレーヌ・ランデモア『民主的理性』勁草書房。 ジョン・ロールズ『正義論 改訂版』紀伊國屋書店。 民主主義の意思決定は、真の「正しさ」にどこまで近づくことができるのか。 シリーズ「民主的理性」第15回となる本エピソードでは、エレーヌ・ランデモアの議論から第8章「政治的認知主義 ひとつの擁護」を取り上げます。 政治的認知主義とは、政治的な問いにも客観的な「正しさ」や「より良い答え」が存在し、民主的な意思決定手...
252民主的理性(13)「系統的な認知バイアス」批判 31.10.2026 33:46
エレーヌ・ランデモア『民主的理性』勁草書房。 ランドモアの著書『民主的理性』を通じ、カプランの『選挙の経済学』に対する批判的検討を扱った回です。 カプランは一般有権者の系統的バイアス(反市場、保護主義、悲観、雇用選好)を理由に多数決の有効性を否定し、専門家による寡頭制を示唆します。これに対しランドモアは主に以下の点から批判を展開します。 方法論的問題と論点先取 :客観的事実の正誤クイズで政治判断能力は...
251民主的理性(12)カプランの『選挙の経済学』 30.10.2026 17:02
エレーヌ・ランドモアの議論の前提として、ブライアン・カプランの著書『選挙の経済学』における有権者の非合理性と民主主義批判を整理した回です。 カプランは、民主主義が愚策を選ぶ原因は有権者の単なる無知ではなく、系統的に誤った信念を抱えている点にあると主張します。市場や日常では誤断が自己のコストになりますが、選挙では一票の影響力が極小なため、個人的コストを負わずに感情に訴える心地よい誤信を合理的に保持し...
250民主的知性(11)多数決の認識的失敗 30.10.2026 28:21
エレーヌ・ランデモア『民主的理性』勁草書房。 エレーヌ・ランドモアの著書『民主的理性』第7章「多数決の認識的失敗」を軸に、多数決に対する3つの批判的論点と反論を整理した内容です。冒頭では前回の「コイントスより少し良い」を「平均」と言い間違えた点についての訂正が行われています。 本題の第1点「判断の政治対利害の政治とアローの不可能性定理」では、個人の利己的選好を前提とする経済学的視点に対し、熟議を通じて...
249民主的理性(10)多数決の理論 28.10.2026 29:56
エレーヌ・ランデモア『民主的理性』勁草書房。 エレーヌ・ランドモアの『民主的理性』を読み解くシリーズ第10回。今回は第6章を取り上げ、熟議と並ぶ民主主義のもう一つの柱である「多数決」を支えるメカニズムと、その理論的根拠を検討します。 少数のエリートによる判断よりも、大勢の市民による多数決のほうが優れた結論を導き得るのはなぜなのか。本回では、多数決を数理的・認識論的に正当化する3つの主要理論を整理します。...
248民主的理性(9)熟議の認識的失敗 26.10.2026 42:35
エレーヌ・ランデモア『民主的理性』勁草書房。 エレーヌ・ランデモア『民主的理性』の「熟議の認識的失敗」を巡る議論の要約である。本講では心理学の「推論の論議理論」を手がかりに、熟議の認識的意義とそれに対する批判が検討される。同理論では、推論を他者の説得や論拠評価のための社会的認知メカニズムと定義し、確証バイアスを抱える個人同士が対話を通じて論拠を相互検証するフィードバックの重要性を説く。 一方で、熟議...
247民主的理性(9)12人の怒れる男たち 24.10.2026 25:56
『民主的理性』の読書会で熟議の具体例として言及された映画『十二人の怒れる男』を実際に鑑賞した記録である。父親殺しの罪に問われたスラム出身少年の裁判後、密室に集まった白人男性12人の陪審員が評議を行う。当初は11対1で有罪が圧倒的だったが、8番の陪審員が拙速な判断を留めて話し合いを求めたことで本格的な議論が始まる。凶器のナイフの希少性への疑問をはじめ、足の不自由な老人の移動時間や電車の通過時の女性の視力と...
246民主的理性(8)包摂的な熟議 23.10.2026 51:12
エレーヌ・ランデモア『民主的理性』勁草書房。 エレーヌ・ランドモアの著書『民主的理性』第4章に基づき、「包摂的な熟議」と「認知的多様性」がもたらす集合知のメカニズムを解説している。熟議とは推論や論証に基づく意思決定プロセスであり、全員一致の合意を目指す理想主義的な立場に対し、対立を明確化し不合意を構造化する現実的なアプローチも議論されている。本章の核心は、均質で極めて優秀な少数の専門家集団よりも、認...
245民主的理性(7)デモクラシーの認識的議論の選択的系譜学 22.10.2026 43:16
エレーヌ・ランデモア『民主的理性』勁草書房。 エレーヌ・ランドモアの著作『民主的理性』第3章に基づき、デモクラシーの認識的議論の系譜を整理している。デモクラシーの優位性や集合知を巡る議論は、主に討議を重んじる「話す人たち(熟議)」と、統計的特性を重視する「数える人たち(集計)」の系譜に大別される。プロタゴラスやアリストテレスは集団全体の知恵や熟議の重要性を説き、マキャベリは君主よりも民衆の判断のほう...
244民主的理性(6)規範的アプローチ 18.10.2026 25:55
エレーヌ・ランデモア『民主的理性』勁草書房。 #シュンペーター主義 #参加理論 #熟議理論 #認識的民主主義 エレーヌ・ランドモア『民主的理性』第2章を解説した講話の要約です。 冒頭では前回講話の言い間違い(ミクロ理論とマクロ理論の混同)をフロイト的解釈やカメラレンズの呼称を交えて訂正し、限定合理性に関してハーバート・サイモンの著作を紹介しています。 本題では「民主主義は愚かな多数者による支配か」という問...
243民主的理性(5)デモクラシーは愚かな多数者による支配なのか 16.10.2026 33:40
バーリン『ハリネズミと狐』岩波文庫。 エレーヌ・ランデモア『民主的理性』勁草書房。 Geminiによる要約。 本講義は、思想の類型論と民主主義における市民像批判を軸に展開されます。 前半ではバーリンの『ハリネズミと狐』を基に、世界を単一の統合原理で捉える「ハリネズミ型」と、多様で矛盾した現実をそのまま受け止める「狐型」の思考を対比します。トルストイは鋭い人間観察眼を持つ「狐」の天性を備えながら、内面では一貫...
242民主的理性(4)人民の集合知としての民主的理性 15.10.2026 32:48
エレーヌ・ランドモア『民主的理性』上下、勁草書房。 Geminiによる要約。 エレーヌ・ランドモアの著書『民主的理性』第1章の読解・講義動画の要約です。 動画では、民主主義を「包摂的な集合的意思決定手続き」と定義し、全員に関わる決定を全員で行う枠組みとして整理します。代表制は即時性が低いゆえに反省や洗練の時間をもたらし、直接民主制以上に知的で優れた統治形態となり得ると指摘されます。 決定ルールには「熟議民主...
241民主的理性(3)迷路と大衆 14.10.2026 24:59
エレーヌ・ランデモア『民主的理性』上下巻、勁草書房。 Geminiによる要約 本動画では、エレーヌ・ランドモアの著書『民主的理性』第1章第1節「迷路と大衆」の内容が解説されています。思想史においてデモクラシーは愚者や群集の支配として疑念を向けられがちでしたが、本書は集合知と認知的多様性の観点からデモクラシーの認識論的優位性を擁護します。 その根拠として「迷路の思考実験」が紹介されます。多様な言語や形式でヒン...
240民主的理性(2)マチズモ、未来世紀ブラジル、ピノキオ 08.10.2026 16:40
ジョージ・モッセ『男のイメージ』中公文庫。 映画「未来世紀ブラジル」 カルロ・コッローディ『ピノッキオの冒険』光文社古典新訳文庫。 手塚治虫『ピノキオ』手塚治虫文庫全集、講談社。 Geminiによる要約。 前半では、イタリア・ファシズムの男性像(マチズモ)の補足に続き、映画『未来世紀ブラジル』や『ショック・ドクトリン』、アサド政権下の実態を例証とします。油断している隙に突然突入し、頭に袋を被せて連行・拷問す...
239民主的理性論(1)もの言うコオロギとプロローグ 05.10.2026 23:54
エレーヌ・ランデモア『民主的理性』上下巻、勁草書房。 Geminiによる要旨。 本動画では、エレーヌ・ランデモアの著書『民主的理性:みんなで決める政治の正しさ』を題材とした新シリーズの導入が語られます。冒頭では、前回取り上げたウンベルト・エーコのファシズム論に登場する「物言うコオロギ」を起点に、『ピノッキオ』の原作におけるコオロギの役割(正論で忠告するもお節介とみなされ殺される存在)やイタリアの慣用句に触...
238知識人論(14)エーコの原ファシズム論 03.10.2026 41:17
ウンベルト・エーコ『永遠のファシズム』岩波現代文庫。 Zoomによる要約。 野村一夫は「ソシオリウム238回目」で知識人論シリーズの第14回として、ウンベルト・エーコの『永遠のファシズム』の「戦争を考える」と「永遠のファシズム」を中心に講義を行った。冒頭では湾岸戦争期の知識人の沈黙や役割を論じ、知識人は真実概念の批判的究明や暫定的な発信、あるいは沈黙という道徳的選択を果たす存在であり、メディア状況の変化によ...
237知識人論(13)ヤスパースの戦争責任論(⑥罪の清め) 02.10.2026 31:30
カール・ヤスパース『われわれの戦争責任について』ちくま学芸文庫。 Zoomによる要約。 野村一夫はソシオリウム237回目の知識人論シリーズで、ヤスパースの「我々の戦争責任」について1946年に出版された本の内容を読み返し、特に「罪の清め」という概念について詳しく説明した。ヤスパースはドイツ人全体が政治的に問われる責任について、個人レベルでの反省と集団的責任の区別が重要であると強調し、清めの回避のパターンとして...
236知識人論(12)ヤスパースの戦争責任論(⑤弁解の可能性) 01.10.2026 27:57
カール・ヤスパース『われわれの戦争責任について』ちくま学芸文庫。 野村一夫は、知識人論シリーズの第12回として、カール・ヤスパースの『我々の戦争責任について』を読み解き、ドイツ人の罪の区別とその弁解の可能性について説明した。ヤスパースは、刑法上の罪、政治上の罪、道徳上の罪、形而上学的罪の四区分を提示し、特に政治的責任は全ドイツ国民が負うべきだと主張した。ヤスパースは、集団としての非難はナチスと同様の...
235知識人論(11)ヤスパースの戦争責任論(④ドイツ人としての罪) 30.09.2026 34:50
カール・ヤスパース『われわれの戦争責任について』ちくま学芸文庫。 Zoomによる要約。 野村一夫はソシオリウム235回目の知識人論シリーズ11回目として、ヤスパースの「戦争責任」というテーマについて話し合いました。主な議題は、ニュルンベルク裁判における戦争犯罪の4つの区別(刑事犯罪、政治に対する罪、道徳に対する犯罪、形而上の罪)についての検討でした。野村は、知識人としての責任と、ドイツ国民が直面した政治的・道...
234知識人論(10)ヤスパースの戦争責任論(③裁くのは誰か) 28.09.2026 25:24
カール・ヤスパース『われわれの戦争責任』ちくま学芸文庫。 Zoomによる要約。 野村一夫はソシオリウム234回目の知識人論のシリーズの十回目として、ヤスパースの戦争責任に関する論文について読み進めていることを報告した。野村はヤスパースの議論を3つの主要論点に分けて説明し、まず外からの非難(刑事犯罪と政治上の罪)と内部からの非難(道徳的・宗教的非難)を区別する必要性、次に集団(特に民族)に対する断罪は個人レベ...
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