闇と鮒

オーディオドラマ「五の線3」

Fiction JA ↓ 100 episodes

【一話からお聴きになるには】 http://gonosen3.seesaa.net/index-2.html からどうぞ。 「五の線」の人間関係性による事件。それは鍋島の死によって幕を閉じた。 それから間もなくして都心で不可解な事件が多発する。 物語の舞台は「五の線2」の物語から6年後の日本。 ある日、金沢犀川沿いで爆発事件が発生する。ホームレスが自爆テロを行ったようだとSNSを介して人々に伝わる。しかしそれはデマだった。事件の数時間前に現場を通りかかったのは椎名賢明(しいな まさあき)。彼のパ

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闇と鮒

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Fiction

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Oct 4, 2025

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Episodes

196.2 第185話【後編】 17.01.2025

3-185-2.mp3瓦礫と煙が充満する中、相馬は身を屈めながらもてなしドームの方向に進んでいく。鉄骨がむき出しになった構造物の隙間から、焦げた臭いと重い空気が流れ込んできた。「…本当にここは金沢駅か?」相馬は一人ごちるように呟いた。滑りやすい足元に何度もつまづきながら、ようやく車両の残骸にたどり着く。彼は息を呑んだ。車両は完全に焼け落ち、炭化した鉄の骨組みだけがかろうじて原形をとどめている。周囲には黒焦げに...

196.1 第185話【前編】 17.01.2025

3-185-1.mp3金沢駅周辺は瓦礫と黒煙に包まれていた。さっきまでの轟音と衝撃は過ぎ去り、代わりに訪れた静寂が耳を痛くするほどだった。辺りには硝煙と焼け焦げた鉄の匂いが漂い、崩れ落ちた構造物の隙間から冷たい風が吹き抜けている。雨はすでに降っていた。小さな雨粒が瓦礫や死体の上に降り注ぎ、静かに煙を冷やしている。雨音がかすかなざわめきのように現場に広がっていたが、次第にその音が耳障りなほど強くなり始めた。吉...

195.2 第184話【後編】 03.01.2025

3-184-2.mp3半壊した柱の陰にしゃがみ込む朝戸は、壁越しに男の姿を捉えていた。男はSATの制服をまとい、平然とした態度で無線に向かって何かを指示している。だが、周囲に転がる遺体、SAT隊員たちの無残な姿が、その男の存在に異様な違和感を与えていた。「不自然すぎるだろ…。」朝戸は呟いた。SAT隊員たちが壊滅状態にある中で、彼だけが生き残っているのはどう考えてもおかしい。男の佇まい、異常な状況、不敵な態度。すべてが...

195.1 第184話【前編】 03.01.2025

3-184-1.mp3機動隊の車両がもてなしドームに突っ込んでくる様を、相馬は物陰に隠れて見ていた。「あいつを壁にするんですか。」「そのようだな。」相馬の隣で児玉も同じように物陰に隠れていた。「え…あれって。」相馬の視界に一機のドローンが映った。刹那それは機動隊車両の上で自爆した。「伏せろ!」唐突に、児玉の声が交番内に響いた。声の鋭さに、相馬は条件反射的に身をかがめ、床に倒れ込むように伏せた。その瞬間――。爆発...

194.3 第183話【後編】 25.10.2024

3-183-3.mp3ドローンが機動隊車両の上空に達したかと思うと、突如として激しい閃光が放たれた。次の瞬間、爆音とともにドローンが自爆し、その衝撃が車両に直撃する。軽めの爆発音爆発音は雷鳴のように周囲に轟き、もてなしドームを揺るがした。その音は商業ビルのガラスを震わせ、破片が空中を舞った。吉川「伏せろっ!」吉川がSAT隊員に大声で言った。大きな爆発車両の中に積まれていた火薬が誘爆した。炎が瞬く間に車両全体を包...

194.2 第183話【中編】 25.10.2024

3-183-2.mp3特殊作戦群「こちら特殊作戦群、これよりアルミヤプラボスディア掃討のため現場に介入する。SATは援護を頼む。」無線の一報が入った瞬間、戦場のすべての勢力が息を呑んだように思えた。自衛隊の特殊作戦群が戦闘に介入する。それは、当該部隊が創設され初めてのことである。しかも現場は日本。すべての当事者が、その異様な光景に困惑し、動きを止めた。片倉「特殊作戦群やと…。」公安特課テロ対策本部の片倉がこれ以...

194.1 第183話【前編】 25.10.2024

3-183-1.mp3外国人観光客の保護を名目に、ウ・ダバの制圧を試みる。それがトゥマンの当初計画だった。だが、その仕込みの外国人観光客が全員殺されてしまった。そのため彼らを保護する行動という名目はなくなってしまった。先ほどから仁川と無線連絡を取ろうとするも応答はない。爆発音トゥマンA「少佐による合図です。」轟音と共に金沢駅のもてなしドームが煙に覆われた。トゥマンA「爆発と同時に車両火災が発生した模様。炎と黒...

193.2 第182話【後編】 04.10.2024

3-182-2.mp3朝戸は商業ビル1階まで降りてきた。ー藤木さんよ…。あんたやっぱり警察の人間だったんだな…。偶然が過ぎた。沙希が眠る寺で偶然出会い、宿も偶然一緒。これを縁としてセバストポリとかいう喫茶店で食事し、他愛もない話で世代を超えて盛り上がる。沙希の姿を投影した山県久美子の様子を見て、気を落ち着かせようと彼女の勤務先の近くにいると、ここでもまた偶然、藤木と遭遇。そこでまさにこのコーヒーチェーン店で自分...

193.1 第182話【前編】 04.10.2024

3-182-1.mp3「おい。あれ。」吉川が妙なものを見るような声を出したため、相馬と児玉は彼の指す方を見た。窓の外に自動小銃を小脇に抱えてこちらの方に悠然と歩いてくる男の姿があった。咄嗟に相馬は本部に照会をとった。「駅交番から本部。」「はい本部。」「音楽堂の方面から鼓門方面に徒歩で移動する、武装した男一名あり。」「それが椎名賢明だ。」「椎名は何を?」「予定より少し早いがウ・ダバをおびき寄せることになった。...

192.2 第181話【後編】 20.09.2024

3-181-2.mp3銃撃数分前「はぁ…はぁ…はぁ…。」ようやく6階の階段踊り場にたどり着いた古田は息も絶え絶えだった。疲労により腰をかがめた状態の彼は、階段の手すりから手を離し、自分の膝をぐっと押す。やっとの思いで、彼は背を伸ばすことができた。ついさっき、パンパンという銃声と後に凄まじい連射音が聞こえた。自分のような警官が所持しているハンドガンの音ではない。連射機能を備えた自動小銃の音だ。こんなところでボヤボ...

192 第181話【前編】 20.09.2024

3-181-1.mp3ここは金沢駅隣接のマンションの一室。必要最低限の通信機材とパソコンが配されたそこには、それを操る通信員と武装した男達が所狭しと待機していた。ベネシュを頭とするトゥマンは部隊を何個かに分けて、この場所に到着した。1時間前のことである。当局が民間人を金沢駅周辺から事前に避難させるようだとの情報を入手したベネシュは、その混乱に乗じて部隊の内3名と、現地協力者の7名でもって商業ビルで威力偵察を仕掛...

191 第180話 06.09.2024

3-180.mp317時半「おい!椎名!マサさん!返事しろ!」片倉が無線機から何度も椎名と富樫の名前を呼ぶ声が聞こえていた。「Слава Отечеству。」「では始めよう。」椎名は車両の中のキャビネットをまさぐり、武器を手に取り始めた。「あぁすいません。無線の調子が急におかしくなってしまって。」「なんや、ジャミングか。」「わかりません。急に音が聞こえなくなってしまって。」「椎名は。」「出ました。」「なに?」「いま車から...

190.2 第179話【後編】 23.08.2024

3-179-2.mp3金沢駅隣接の商業ビル。ここでは30分前から施設の緊急点検を行うということで、ビルに入居する店舗と来店客に一斉退去を求めていた。山県久美子が店長を務める店舗も例外ではなく、アルバイトを先に帰宅させた彼女は売上金や釣り銭を手持ちの巾着袋にまとめて、それを抱えて業務用の階段で移動していた。「久美子!」人の流れに逆らうようにこちらに向かって来る者があった。オーナーの森である。彼女らは一旦人の流れ...

190.1 第179話【前編】 23.08.2024

3-179-1.mp3青と白のストライプ柄の機動隊車両が音楽堂側の道路に駐車した。車の中では様々な通信機器が搭載されていて、頻繁にどこかと交信している様子だ。「あと30分。」腕時計に目を落とした富樫が呟いた。「5分前に出るか。」「はい。」富樫と横に並ぶように座っているのは椎名賢明だ。この車両の中には彼ら二人と機動隊員3名。通信手が2名の総勢7名が居る。椎名は窓に掛けられたカーテンに隙間を作り、そこからのぞき込むよ...

189.2 第178話【後編】 19.07.2024

3-178-2.mp3金沢駅の改札口前に大きなホワイトボードが設置された。そこには「この先大雨の予報のため、本日の運行を中止します」と達筆で書かれている。確かにまとまった雨が降り出した。しかし昨日の大雨と比べてたいしたことは無い。携帯の天気予報アプリで雨雲レーダーを見ても、そこまでの降雨量は予想されていない。なのに運行中止の案内だ。駅側の説明によると、昨日の大雨によって緩んだ地盤が、今日のこの雨によって崩壊...

189.1 第178話【前編】 19.07.2024

3-178-1.mp3「ご遺族には私から連絡する。当面デスクは三波君のことは秘して、平静を装ってくれ。」「…。」加賀と正対する黒田はただひたすらに床を見つめて直立していた。前髪が黒田の顔を隠すため、加賀の目では彼がどういった表情をしているかは分からない。「デスク。」「…わかりました。」社長室から出た黒田は二歩ほど歩いた。しかしどうも足下がおぼつかない。壁により掛かるとへなへなと自分の身を折りたたむようにそのま...

188.2 第177話【後編】 05.07.2024

3-177-2.mp3静かに開かれたそこから岡田が姿を現した。片倉と富樫は彼の姿を見てこう思った。疲れ切っている。ここ数日、まとまった休息をとっていない。それは片倉や岡田、百目鬼と言った上層部の人間だけがそうだというわけでなく、富樫のような現場の人間も同じだ。皆に余裕がない。だから片倉も富樫もここで岡田を気遣うような言葉を発する余裕もなかった。部屋に入ってきた岡田はスピーカーから流れるツヴァイスタン語の会話...

188.1 第177話【前編】 05.07.2024

3-177-1.mp3コーヒーをすする音「完全に暴走し出した感じですかね。朝戸。」「…。」「片倉班長?」「あ、あぁ…。」再びコーヒーを啜った富樫は片倉を珍しいものを見るような目をして続ける。「案外、班長もセンチなんですな。」「…。」「センチになるのは明日で良いじゃないですか。」この言葉に片倉は一息つく。「…あぁそうや。無事明日になれば、そこで思いっきり怒って笑って泣けば良い。マサさんの言う通りや。」こういうと片...

187.2 第176話【後編】 21.06.2024

3-176-2.mp3バイクのエンジンを切った京子はそれから飛び降りた。山小屋の入り口付近の状況は先ほどと何の変わりもない。あるのは今乗ってきたオフロードバイクだけだ。小屋の入り口の前に立った京子はそこから再び三波の名前を呼んだ。「三波さん。」返事がない。自分の声量が小さかったかもしれない。しかし大きな声を出すのは憚られる雰囲気をこの場は持っていた。京子は恐る恐る入り口扉を開いた。暗い。壁板から漏れる明かり...

187.1 第176話【前編】 21.06.2024

3-176-1_2.mp3「片倉班長。報告が。」神妙な面持ちで捜査員のひとりが片倉に耳打ちした。「先ほどまでここに居た捜査員が逃走しました。」「なにっ?」「署内で電話をする奴の姿を見た同僚警察官が声をかけると、ごにょごにょ言ってその場から走って逃げだしたというものです。」「簡単に説明してくれ。」片倉の代わりに椎名の対応をしていた捜査員が、署内で「合図を待て」とか「追って連絡する」と電話で話す姿を同僚警察官が見...

186.2 第175話【後編】 07.06.2024

3-175-2.mp3「おかけになった電話は電波の届かないところにあるか、電源が切られているため…」「なんだよー。どこ行っちゃったのよ…。」電話を切った片倉京子はため息をついた。ここで待ってると言われた場所に戻ってきたのに、当の三波が居ない。まさか心変わりしてまた家に帰ったなんて事はあるまい。体力が回復したから先を急いだのだろう。どうせすぐに私に追いつかれるのだから。そう判断した京子は遊歩道を歩くのを止め、開...

186.1 第175話【前編】 07.06.2024

3-175-1.mp3「はぁはぁはぁ…。」息を切らして部屋の隅に膝を抱え込んで座る朝戸がいた。彼の視線の先には横たわる男の姿が二つ。いや三つ。何れも血液によって畳を黒く染めている。頭痛音「ううっ!」金槌のようなもので殴られたのではないかと思えるほどの衝撃が自分の頭部に走る。頭を抱えて彼はその場に倒れた。すると左肩をじゅわっとした液体の感触が走った。なんとも言えない不快な感覚だ。しかしその不快よりも頭痛の方が勝...

185 第174話 24.05.2024

3-174.mp3マウスホイールをころころと転がし、SNSのタイムラインを流し読みする椎名の目が「日本大好き」という名前のアカウントを補足した。ーちうつょえひいしなはひうじょんくょふここで椎名の動きは止まることは無い。他愛もないポストの連続だと言わんばかりに、椎名はタイムラインを下へ移動させた。この部屋には自分以外の誰もいない。あるのはデスクトップ型のパソコンと部屋の四隅に設置されたカメラだけ。椎名は大きくた...

184.2 第173話【後編】 29.03.2024

3-173-2.mp3民泊の床下から続く通路は20メートル先の廃屋に通じていた。そこには生活の形跡はなく、何者かが常駐していた様子もなかった。ただ鑑識によるとバイクのタイヤ痕のようなものが確認されており、ここに出た朝戸は、そのバイクに乗って何処かへ移動したものと考えられた。「駄目です。目撃情報はありません。」地取り捜査の報告を受けた岡田は肩を落とした。「自衛隊も公安特課も踏み込んだら対象居ませんでしたって…。」...

184.1 第173話【前編】 29.03.2024

3-173-1.mp3時刻は正午となった。携帯を見た椎名は、力なく首を振った。「梨の礫か…。」「こうなったからには、朝戸は捨てます。朝戸は発見次第排除お願いします。」百目鬼に椎名が応えた。「朝戸の合図を持って事が始まるんだろう。」「私の統制下で事を起こす分には、それは制御可能ですが、事態はそうではありません。なので危険は排除しましょう。」百目鬼は隣に居た片倉と目を合わせてひと言。「わかった。」これに椎名は頷い...

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