一般社団法人 青空朗読
青空朗読
インターネット上の図書館「青空文庫」の作品を朗読する「青空朗読」は、プロのアナウンサーによる社会貢献活動としてスタートし、最近は、朗読を学ぶ一般の方々からも作品を提供していただいています。2016年5月に一般社団法人となりました。
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納豆合戦 著者:菊池 寛 読み手:福井 慎二 時間:14分33秒 03.11.2025 14:33
納豆合戦 著者:菊池 寛 読み手:福井 慎二 時間:14分33秒 一 皆さん、あなた方は、納豆売の声を、聞いたことがありますか。朝寝坊をしないで、早くから眼をさましておられると、朝の六時か七時頃、冬ならば、まだお日様が出ていない薄暗い時分から、 「なっと、なっとう!」と、あわれっぽい節を付けて、売りに来る声を聞くでしょう。もっとも、納豆売は、田舎には余りいないようですから、田舎に住んでいる方は、まだ...
狐のつかい 著者:新美 南吉 読み手:室 由美子 時間:4分21秒 02.11.2025 4:21
狐のつかい 著者:新美 南吉 読み手:室 由美子 時間:4分21秒 山のなかに、猿や鹿や狼や狐などがいっしょにすんでおりました。 みんなはひとつのあんどんをもっていました。紙ではった四角な小さいあんどんでありました。 夜がくると、みんなはこのあんどんに灯をともしたのでありました。 あるひの夕方、みんなはあんどんの油がもうなくなっていることに気がつきました。 そこでだれかが、村の油屋まで油を買いにゆ...
横綱 著者:太宰 治 読み手:小川 幸香 時間:2分10秒 01.11.2025 2:10
横綱 著者:太宰 治 読み手:小川 幸香 時間:2分10秒 二、三年前の、都新聞の正月版に、私は横綱男女ノ川に就いて書いたが、ことしは横綱双葉山に就いて少し書きましょう。 私は、角力に就いては何も知らぬのであるが、それでも、横綱というものには無関心でない。或る正直な人から聞いた話であるが、双葉山という男は、必要の 無いことに対しては返辞をしないそうである。お元気ですか。お寒いですね。おいそがしいでしょ...
質屋の小僧 著者:宇野 浩二 読み手:松岡 初子 時間:23分31秒 31.10.2025 23:31
質屋の小僧 著者:宇野 浩二 読み手:松岡 初子 時間:23分31秒 私がどんなに質屋の世話になつたかといふ事は、これまで、小説に、随筆に、既にしばしば書いたことである。だが、私だとても、あの暖簾を単独でくぐるやうになる迄には、余程の決心を要した。私が友人を介して質屋の世話になり始めてから、友人なしに私一人でそこの敷居をまたぐやうになつた迄には、少なくとも二年の月日がかかつた。 それは私が二十四歳の秋...
十三年 著者:山川 方夫 読み手:西村 文江 時間:9分24秒 30.10.2025 9:24
十三年 著者:山川 方夫 読み手:西村 文江 時間:9分24秒 明るい昼すぎの喫茶店で、彼は友人と待ち合わせた。友人はおくれていた。 客のない白い円テーブルが、いくつかつづいている。夏のその時刻は客の数もまばらで、そのせいか、がらんとした店内がよけいひろくみえる。 ふと、彼は、彼をみつめている一つの眼眸に気づいた。生温くなった珈琲にゆっくりと手をのばして、彼は、同じ窓ぎわの、五、六メートル先きのテー...
玉虫のおばさん 著者:小川 未明 読み手:緒方 朋恵 時間:9分48秒 29.10.2025 9:48
玉虫のおばさん 著者:小川 未明 読み手:緒方 朋恵 時間:9分48秒 ある日、春子さんが、久代さんの家へ遊びにまいりますと、 「ねえ、春子さん、きれいなものを見せてあげましょうか。」と、いって、久代さんは、ひきだしの中から、小さなきりの箱を取り出しました。 「この中に、なにが入っているか、あててごらんなさい。」と、笑いながら、いいました。 春子さんは、なんだろうと思いました。いくら頭をかしげてもわかり...
死霊 著者:小泉 八雲/田部 隆次 訳 読み手:福井 慎二 時間:6分11秒 28.10.2025 6:11
死霊 著者:小泉 八雲/田部 隆次 訳 読み手:福井 慎二 時間:6分11秒 越前の国の代官、野本彌治衞門の歿した時、その下役の者共相謀って、その故主人の遺族をだまそうとした、代官の負債の幾分を償却すると云う口実の下に、その家の財宝家具全部を押えた。その上、故主人が無法にも自分の資産の価値以上の債務を契約したように見える偽りの報告書を整えた。この偽りの報告を彼等は宰相に送った、そこで宰相は越前の国から野...
懐中時計 著者:夢野 久作 読み手:畠山 有香 時間:1分4秒 27.10.2025 1:04
懐中時計 著者:夢野 久作 読み手:畠山 有香 時間:1分4秒 懐中時計が箪笥の向う側へ落ちて一人でチクタクと動いておりました。 鼠が見つけて笑いました。 「馬鹿だなあ。誰も見る者はないのに、何だって動いているんだえ」 「人の見ない時でも動いているから、いつ見られても役に立つのさ」 と懐中時計は答えました。 「人の見ない時だけか、又は人が見ている時だけに働いているものはどちらも泥棒だよ」 鼠は恥かしく...
男心とはかうしたもの 女のえらさと違う偉さ 著者:岡本 かの子 読み手:宮崎 文子 時間:3分23秒 26.10.2025 3:23
男心とはかうしたもの 女のえらさと違う偉さ 著者:岡本 かの子 読み手:宮崎 文子 時間:3分23秒 尊敬したい気持 結婚前は、男子に対する観察などいつても、甚だ漠然としたもので、寧ろこの時代には、男とも、女とも意識しなかつた位です。 それが結婚して、やうやく男子に対する自覚が出来、初めて男といふものが解つた時、私の感じたのは、男子といふものは事業慾が強くて、一般に利己主義なものだと思ひました。...
お鍋とおやかんとフライパンのけんくわ 著者:村山 籌子 読み手:福井 一恵 時間:5分23秒 25.10.2025 5:23
お鍋とおやかんとフライパンのけんくわ 著者:村山 籌子 読み手:福井 一恵 時間:5分23秒 よう子ちやんはお台所が大好きでした。なぜといつて、お料理のにほひはほんとにおいしさうなんですもの。それに、おさじや フオークや お茶碗や お皿などがカチン、カチン、チヤラ、チヤラと可愛いい音をたててゐます。それからもつと、色んな音がします。 お鍋の中ではクツタ、クツタ、クツタとお湯のにたつ音がしますし、ジヤ、...
夢 著者:芥川 龍之介 読み手:二宮 正博 時間:3分11秒 24.10.2025 3:11
夢 著者:芥川 龍之介 読み手:二宮 正博 時間:3分11秒 夢の中に色彩を見るのは神経の疲れてゐる証拠であると云ふ。が、僕は子供の時からずつと色彩のある夢を見てゐる。いや、色彩のない夢などと云ふものはあることも殆ど信ぜられない。現に僕はこの間も夢の中の海水浴場に詩人のH・K君とめぐり合つた。H・K君は麦藁帽をかぶり、美しい紺色のマントを着てゐた。僕はその色に感心したから、「何色ですか?」と尋ねて見...
満願 著者:太宰 治 読み手:三田 朱美 時間:6分21秒 23.10.2025 6:21
満願 著者:太宰 治 読み手:三田 朱美 時間:6分21秒 これは、いまから、四年まえの話である。私が伊豆の三島の知り合いのうちの二階で一夏を暮し、ロマネスクという小説を書いていたころの話である。或る夜、酔いながら自転車に乗りまちを走って、怪我をした。右足のくるぶしの上のほうを裂いた。疵は深いものではなかったが、それでも酒をのんでいたために、出血がたいへんで、あわててお医者に駈けつけた。まち医者は三十...
短夜の頃 著者:島崎 藤村 読み手:齊藤 雅美 時間:10分29秒 22.10.2025 10:29
短夜の頃 著者:島崎 藤村 読み手:齊藤 雅美 時間:10分29秒 毎日よく降つた。もはや梅雨明けの季節が來ている。町を呼んで通る竿竹賣の聲がするのも、この季節にふさはしい。蠶豆賣の來る頃は既に過ぎ去り、青梅を賣りに來るにもやゝ遲く、すゞしい朝顏の呼聲を聞きつけるにはまだすこし早くて、今は青い唐辛の荷をかついだ男が來はじめる頃だ。住めば都とやら。山家生れの私なぞには、さうでもない。むしろ住めば田舍といふ...
徒歩旅行を読む 著者:正岡 子規 読み手:宮崎 文子 時間:8分25秒 21.10.2025 8:25
徒歩旅行を読む 著者:正岡 子規 読み手:宮崎 文子 時間:8分25秒 紀行文をどう書いたら善いかという事は紀行の目的によって違う。しかし大概な紀行は純粋の美文的に書くものでなくてもやはり出来るだけ面白く書こうとする即美文的に書こうとする、故に先ず面白く書くという事はその紀行全部の目的でなくても少くも目的の五分は必ずこれであると極めて置いて、さてその外の五分は人によって種々雑多に書かれて居る事である。...
忠五郎のはなし 著者:小泉 八雲/田部 隆次 訳 読み手:福井 慎二 時間:17分33秒 20.10.2025 17:33
忠五郎のはなし 著者:小泉 八雲/田部 隆次 訳 読み手:福井 慎二 時間:17分33秒 昔、江戸小石川に鈴木と云う旗本があって、屋敷は江戸川の岸、中の橋に近い所にあった。この鈴木の家来に忠五郎と云う足軽がいた。容貌の立派な、大層愛想のいい、怜悧な若者で、同僚の受けも甚だよかった。 忠五郎は鈴木に仕えてから数年になるが、何等非難の打ち所のない程身持もよかった。しかし遂に外の足軽は、忠五郎が毎夜、庭から抜...
オペラの辻 著者:岡本 かの子 読み手:水野 久美子 時間:17分28秒 19.10.2025 17:28
オペラの辻 著者:岡本 かの子 読み手:水野 久美子 時間:17分28秒 巴里は世界の十字路といわれている。巴里の中でもブラス・ドゥ・オペラ(オペラの辻)は巴里の十字路といわれている。 冬の日が暮れると神廟のようなオペラの建物は闇の中にいよいよ黒く静まり返える。オペラの開幕は八時だから今はまだその広い入口の敷石に衛戍の兵士が派手な制服で退屈な立番の足を踏み代えているだけである。その前にすぐ地下鉄の出入...
秋草と虫の音 著者:若山 牧水 読み手:松岡 初子 時間:13分27秒 18.10.2025 13:27
秋草と虫の音 著者:若山 牧水 読み手:松岡 初子 時間:13分27秒 秋草の花のうち、最も早く咲くは何であらう。萩、桔梗、などであらうか。 桔梗も花壇や仏壇で見ては、厭味になりがちである。野原のあを/\とした雑草のなかに、思ひがけない一輪二輪を見出でた時が本統の桔梗らしい。 汽車が甲州の韮崎駅を出て次第に日野春、小淵沢、富士見、といふ風に信濃寄りの高原にかゝつてゆく。その線路の両側に、汽車の風にあふ...
ウマヤノ ソバノ ナタネ 著者:新美 南吉 読み手:室 由美子 時間:12分13秒 17.10.2025 12:13
ウマヤノ ソバノ ナタネ 著者:新美 南吉 読み手:室 由美子 時間:12分13秒 ウマヤノ マドノ ソトニ ナタネガ ハエテ ヲリマシタ。 マダ 花ハ サイテ ヲリマセン。ケレド ツボミガ タクサン ツイテ ヲリマシタ。 モウ ヂキ ハルガ クルノデス。ウマヤノ マエノ ヒザシガ ヒニ ヒニ アタタカク ナツテ クロイ 土カラ 白イ ユゲガ ノボリハヂメテ ヰマス。 ナタネノ ツボミタチハ カンバ...
怪物と飯を食ふ話 著者:岡本 一平 読み手:西村 文江 時間:10分19秒 16.10.2025 10:19
怪物と飯を食ふ話 著者:岡本 一平 読み手:西村 文江 時間:10分19秒 上 死んだ小説家の獨歩は天地に驚き度いと申しました。わたくしのは少し違ひます。時々呆れるやうなものに打つからぬと生命が居眠りをして仕舞ふのです。 ふと相撲場へ行きました。出羽嶽といふ力士の馬鹿々々しい大きさに少し呆れる事が出来ました。広い世界に同じ心持ちの人があるかも知れぬ。呆れをお福分けする積りで五六日土俵上の怪物の動静...
祭の晩 著者:宮沢 賢治 読み手:三田 朱美 時間:15分 15.10.2025 15:00
祭の晩 著者:宮沢 賢治 読み手:三田 朱美 時間:15分 山の神の秋の祭りの晩でした。 亮二はあたらしい水色のしごきをしめて、それに十五銭もらって、お旅屋にでかけました。「空気獣」という見世物が大繁盛でした。 それは、髪を長くして、だぶだぶのずぼんをはいたあばたな男が、小屋の幕の前に立って、「さあ、みんな、入れ入れ」と大威張りでどなっているのでした。亮二が思わず看板の近くまで行きましたら、いきな...
鷹を貰い損なった話 著者:寺田 寅彦 読み手:小川 幸香 時間:5分28秒 14.10.2025 5:28
鷹を貰い損なった話 著者:寺田 寅彦 読み手:小川 幸香 時間:5分28秒 小学時代の先生方から学校教育を受けた外に同学の友達からは色々の大切な人間教育を受けた。そういう友達の中にも硬派と軟派と二種類あって、その硬派の首 領株からはだいぶいじめられた。板垣退助を戴いた自由党が全盛の時代であったので、軍人の子供である自分は、「官権党の子」だという理由でいじめられた。 東京訛が抜けなかったために「他国もんの...
かぶらずし 著者:中谷 宇吉郎 読み手:福井 慎二 時間:2分57秒 13.10.2025 2:57
かぶらずし 著者:中谷 宇吉郎 読み手:福井 慎二 時間:2分57秒 金沢の郷土の漬け物に、かぶらずしというものがある。大きいかぶらを、厚さ一センチくらいに切り、中に切れ目を入れて、その中に塩ブリをはさむ。それを重石を強くしてこうじでつけたもので、非常にうまい漬け物である。 北陸地方では、すしといえば、たいてい押しずしであって、江戸風の握りずしは、近年になって、はいってきたものである。普通は米の上にマ...
赤い船とつばめ 著者:小川 未明 読み手:緒方 朋恵 時間:4分46秒 12.10.2025 4:46
赤い船とつばめ 著者:小川 未明 読み手:緒方 朋恵 時間:4分46秒 ある日の晩方、赤い船が、浜辺につきました。その船は、南の国からきたので、つばめを迎えに、王さまが、よこされたものです。 長い間、北の青い海の上を飛んだり、電信柱の上にとまって、さえずっていましたつばめたちは、秋風がそよそよと吹いて、木の葉が色づくころになると、も はや、南の方のお家へ帰らなければなりませんでした。寒さに弱い、この小...
若き日の思い出 著者:牧野 富太郎 読み手:二宮 正博 時間:8分51秒 11.10.2025 8:51
若き日の思い出 著者:牧野 富太郎 読み手:二宮 正博 時間:8分51秒 一、雨の深山で採集 私は自分の学問に対してあまり苦労したことはなかった。今日まで何十年にわたる長い年月の間実に愉快に学問を続けてきて、ついに今日に及んだのであるが、平素その学問を特に勉強したようにも感じていないのは不思議である。 これは結局生まれつき植物が好きであったため、その学問があえて私に苦痛を与えなかったのであろう。...
私の父と母 著者:有島 武郎 読み手:宮崎 文子 時間:12分38秒 10.10.2025 12:38
私の父と母 著者:有島 武郎 読み手:宮崎 文子 時間:12分38秒 私の家は代々薩摩の国に住んでいたので、父は他の血を混えない純粋の薩摩人と言ってよい。私の眼から見ると、父の性格は非常に真正直な、また細心なある意味の執拗な性質をもっていた。そして外面的にはずいぶん冷淡に見える場合がないではなかったが、内部には恐ろしい熱情をもった男であった。この点は純粋の九州人に独得な所である。一時にある事に自分の注意...
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